南方熊楠(1867~1941)は博物学・民俗学・植物学における近代日本の先駆者的な研究者です。十数年にわたってアメリカ、イギリスを舞台に研究生活を送り、人文・自然科学にこだわらず森羅万象あらゆるものを記録するスタイルで研究を続けました。帰国後もイギリスの科学雑誌『ネイチャー』や『ノーツ・アンド・クエリーズ』に投稿を続け、また柳田国男らとともに神社合祀反対運動・自然保護活動に力を注いだほか、後に中村元や鶴見和子らに「南方マンダラ」と呼ばれた熊楠思想は独特な魅力にあふれ、熊楠を研究する人々は現在も増え続けています。
『熊楠研究』は熊楠に関係する未発表の論考を収める年1号発行の研究書で、熊楠研究の分野において最も権威のあるシリーズとして高く評価されています。
〈第15号 2021年版 特長〉
★特集1「腹稿の謎を探る2」
熊楠が記述する前に、大きな紙に、学問的な発想や参考文献を書き混んでいたものを「腹稿」と呼びます。縦横無尽に書かれている様はまさに熊楠ワールドです。熊楠の肉筆資料の研究が進み、さまざまな記述の翻刻作業が進んでおり、ついに熊楠資料の中でも最難関とされてきた腹稿も解読がはじまりました。2020年刊の第14号の特集につづいて、今号では、虎に関する腹稿に焦点を当てた5本の論文を掲載します。
松居竜五「虎に関する腹稿の解読(二)」
志村真幸「虎の腹稿の『太陽』掲載版への利用状況」
司志武「虎の腹稿から読み取る南方熊楠の思考方法」
田村義也「「腹稿(馬について)」解読の試み」
石井正己「腹稿に残された小宇宙」
★特集2「熊弥さんの療養と南方熊楠」
熊楠の長男の熊弥さんは高校受験の際に精神のバランスを崩し、4年間の自宅療養の後、精神病院に入院し、退院後も看護人だけと暮らす生活を送りました。熊弥さんの療養生活と、父であり監護義務者となった熊楠についての論文を掲載します。また、熊弥さんが岩倉病院に入院はじめた前後11日間の熊楠の日記について解説し、翻刻を掲載します。
千本英史「藤白での熊弥さんの療養環境について」
中村治「南方熊弥と岩倉」
岸本昌也「監護義務者・南方熊楠」
熊楠関西編「熊楠日記 昭和三年五月十日~二十一日」
その他