二本松市の「銀の森治療院」院長渡辺健さん(58)は10月23日、母三一子さん(87)との共著「ヘヴンズ・ライト」を福島民報社から出版した。本書は、母に続き自身も県文学賞エッセー・ノンフィクション部門で正賞を受賞したことを機に出版されたものであり、それぞれの受賞作品が収録されている。
母三一子さんは2023(令和5)年の第76回で、長男健さんは2025(同7)年の第78回で同賞に選出された。三一子さんの受賞作「あの三百六十六日」では、高校卒業後の東京での住み込み先で体験したことをつづった。経済的事情で進学困難であった彼女に、高校の恩師が子守と家事手伝いを勧めた。そこで出会った人々の生き方や日々の出来事に刺激を受け、生涯の宝となった濃密な1年を見出しとなる俳句とともにみずみずしく表現した。
健さんは受賞作「言霊の幸わう国で」では、徐々に視力が低下していく自身の不安や悩みとともに、それを支える家族や教え子、知人への感謝の思いをつづった。30歳の時、進行性の難病「網膜色素変性症」と診断された。病状の悪化に悩まされながらも県内で23年間教壇に立った。やがて、子供たちの表情も分からなくなるほど病状が悪化、2015(平成27)年に退職、鍼灸師への道へと進んだ。
困難に直面しても決して諦めず、希望の灯りへと歩むたくましさは、母から子へと確実に受け継がれていることを気付かせてくれる。
2つの作品をつなぐプロローグ、インタールード、エピローグは健さんが書き下ろし、本書に奥行きを与えている。健さんの高校時代の同級生で詩人和合亮一さんが「尽きせぬ光をたずねて」のタイトルで寄稿し、帯文も執筆して本書の特長を紹介している。
健さんは「これまで前向きに生きてこられたのも母の遺伝子のおかげ。そんな母とともにこの一冊の本にたどりつけたことが今はとにかく嬉しい。」と語る。