荒川と隅田川にはさまれた、ほんの2キロ四方しかない小さな島のようなまち千住(東京都足立区)は、宿場町のDNAを受け継いだ「ごった煮」のようなまちだ。5路線が乗り入れ、一日乗降者数約150万人と国内有数の北千住駅がドンとあるが、まちの名前は北千住でなくて千住だ。
ここで暮らす12人に焦点を当て、ユニークな暮らしぶりを紹介することで、地域で暮らす楽しさ・魅力を紹介している。その1人、「仮称コーミンカン!」女性館長はリノベーションした古民家で「それぞれの朝食会」など肩ひじ張らない交流の場を実現している。また、半年ごとに値上げするシェアハウスなど面白シェアハウスや棚本屋などを運営する30代独身不動産会社社長は自らもシェアハウスに住み、「昔の長屋のようで面白い」と飲み屋街とカフェの常連だ。さらに、この狭いまちに6軒の銭湯が営業しているが、その1つ「ニコニコ湯」を脱サラして引き継いだ当主は廃材からのオリジナルグッズを並べて「まちに元気を」と活躍する。
千住宿は約400年前の江戸初期、日光街道の最初の宿場町として開宿された。奥州街道・水戸街道の分岐点でもあり、旅人の往来に加えて、江戸に物資を運び込む中継地として多くの問屋が軒を並べ「江戸4宿」でもっとも繁盛したという。商家の旦那衆が名だたる文人を招いて築いた独自の文化は今も引き継がれ、曲がりくねった路地には当時の町割りが健在だ。一方で、近年は5つの大学が次々とキャンパスを開設、若者が目立って増え、新しいファッションもアートもそろうまちになった。新旧混在したモザイクのようなまちには、さらっとしていて、来るもの拒まず去るもの追わずの宿場町気質が残る。
ただ、地価の割に交通の便が良いこのまちに再開発の波が押し寄せ、世代交代のタイミングがそれを加速、まち中にあった歴史や文化がプツンと音をたてて何もなかったかのように途切れてしまう姿がみられるようになった。歴史や文化を積み重ねた上に暮らしがある。その暮らしを大事にしている人たちを紹介することで、地域と暮らす大事さを訴えたい、この本にはそうした思いも込められている。