「昔は今よりも〈変梃(ヘンテコ)な人〉というのがたくさんいたようで、その〈変〉もどこか突き抜けて「へんだけど、なんかすごい」みたいな人のことは〈奇人〉と呼んだりしていますが、こうした一風変わった人たちのことを、今の「多様化の時代」「正解のない時代」にもう一度掘り起こしてみるのもおもしろいかな……と考えました。
ところがこうした〈変方来(へんぽーらい)〉な人たちは、どうも自分の名とか事跡を残そうという発想が希薄らしくて……伝記類はほとんど残っておらず、当時の聞き書きなどに「そういえば、そんな人がいたっけか……」と奇天烈なエピソードがわずかに語り残されているばかり。歴史の中には、教科書には出てこないようなへんてこりんでおもしろい人物がまだまだいっぱいうごめいているようです。
そして、その〈変方来〉な人々の生きざまをつぶさに見ていくと……とにかく夢中になって一途に我が道を突き進む姿は、どこか武道とか、医道、芸道などの〈○○道〉にも相通じるものがあるようにも思われるのでした。
今回取り上げた六人に共通するのは、〈江戸っ子的な気風〉です。実際に、高橋瑞以外は生粋の江戸っ子で……どうやら江戸っ子というのは、〈粋〉で〈いなせ〉というよりも、一途に〈変梃〉……というのも特徴のひとつであると思うのですが、最近語られる江戸っ子というのは、そのへんが欠落しているような気もします。
……変梃なところがいとおしいのに ーーあとがきより