未知の気配に触れる言葉のふるえ。
吸い殻の消えない煙、薄紅の雲、埃を被った鋏、まだ彫られていない皮膚の刺青──。
世界のあわいをたどる22篇。第三詩集。
装幀=鈴木規子
ゆっくりと日輪滑り
その切れ端は水底にも溶け出している
にんげんたちは知らずに鎮まっている
吸い殻の、消えない煙高くなり
つぼみにも茎にもたかる幼虫の
噴水のよう。
両手で押しいただくように
しばらくの霧雨が、うれしい
上がったのを知ったのは
落ち葉に見えていた虫が
その翅をゆっくり開き
中の水色を見せたため。
最後の雨粒がその上を転げ
無言で熟れきった昼は
とっくに弾けて
手のひらはずぶ濡れになる
匂う 急な
大輪。
わたしは時間の破れるのを待っていた
一度は取れた翅を逆さに背負い
逃げもしない日差しの中で
向かっていく
(「みずいろ」)