あなたが毎日使っているAI。これを作った人間たちが、世界を動かしている。民主主義の国では選挙で選ばれることが権力者になる条件である。しかし選挙で選ばれることなく、世界を動かす権力をもった人間がいる。サム・アルトマンとダリオ・アモデイの二人である。この「知の巨人」は、人類の知性・安全保障・資本の構造を根底から変えつつある。人工知能を得た資本主義は「AI資本主義」へと進化した。この新しい資本主義は、人類を幸福にできるシステムなのか。防衛省の委嘱を受け、新領域の安全保障を調査研究をしてきた著者がこの問いを考察する。
あなたは今日、ChatGPTかClaudeと会話しただろうか。
このAI(チャット型人工知能)を作った人間がいる。OpenAI最高経営責任者サム・アルトマンと、Anthropic最高経営責任者ダリオ・アモデイ。この二人は、今や世界の政治をも大きく動かす権力を手にしているとも言える。しかしその権力は、彼らが熱望して手に入れたものではない。
本書はこの二人を「Unelected Sovereigns(選挙で選ばれることなく、権力を手にした者)」と呼ぶ。
ここで、これまでの資本主義は終焉を迎え、あらたな「AI資本主義(AI Capitalism)」が誕生することになった。彼らは人類史上最高額の開発資金を投資として呼び込む。そして彼らの判断は世界中の知的労働を変化させる。かつて人類が経験したことのない領域と社会構造の変化が起きている。
そして「彼らの判断やひらめき」が各国の安全保障政策を動かし、戦場における生死の判断系にまで関わろうとしている。
なぜ非営利で出発したOpenAIが世界最大の資本を動かす企業になったのか。2023年11月、深夜の自己消滅メールで計画されたクーデターの内側で何が起きたのか。Anthropicはなぜ国防総省の要求を公然と拒否し、アメリカ史上初めて「国家安全保障上のサプライチェーンリスク」に指定されたのか。ChatGPTとClaudeという名前の語源に、どんな思想が宿っているのか。
これらの問いを解きながら、本書が最終的に向かう先は一つの根本的な問いである。
「AI資本主義は人類を幸福にできるか?」
著者は防衛省の委嘱を受け、ベルリンを拠点に各国の軍事に於ける通信、セキュリティ、装備を調査した経験を持つ。その視点から、「安全性(Safety)」を掲げるシリコンバレーの企業が「安全保障(Security)」の論理に飲み込まれていく構造を、読者に向けて解剖する。
本書は単純な人物評伝ではない。また技術書でもない。AI資本主義の誕生の歴史、現状、近未来への予測を記録として残すべく書かれた本である。前例のないドキュメントである。
英語版のアメリカでの発売を予定している。