六世紀、南北朝時代の中国に稀代の梟雄が誕生した。北朝・南朝の双方で反乱を起こし、自身が巻き起こした混沌の中で、前代未聞の称号「宇宙大将軍」を名乗った男、侯景である。
侯景の知名度は高いとはいえない。しかしその人生、その時代はいわば「ネタの宝庫」だ。ではそれらを種に物語を書いたら、どのような実が結ぶだろうか――。
本書には、宇宙大将軍侯景をインスピレーションの種として、15名の作家が銘々に紡いだ15篇の物語が収録されている。
「アンソロジーを編むにあたっては、侯景SFというテーマがあまりにも狭いため、似たような作品ばかりになるのではないかと心配した。しかし、ふたを開ければとんでもない。極狭のテーマに対し、かくも多種多様な作品が寄せられたのである」(編者解説より)
予備知識はいらない。読者のなかに、異形の怪物として侯景が立ち上がるかもしれないが、責任はとれない。ご注意を。