社長はゴリラである。遠くの木を目指して走り出したはずなのに、途中でバナナを見つければ、思わず飛びついてしまう。昨日「変革だ!」と言ったのに、今日は違うことを言う。そんな社長に振り回され、疲れている社員やナンバー2は少なくない。しかし、社長を変えようとするのではなく、その本能を理解し、大きな方向性をつかむことができれば、組織はもっと強くなれる。
著者は2014年、東大阪市に歯科医院を開業した。「人を大切にする会社をつくりたい」という思いから、スタッフを家族のように考え、仕事も遊びも全力。売上は伸び、人も増えていった。ところが、組織が大きくなるにつれてコミュニケーションが崩れ、人間関係が悪化。リーダー制や評価制度を導入しても状況は改善せず、ついにはスタッフを信じることができなくなり、自ら医院を離れてしまう。
転機となったのは、YouTube講演家・鴨頭嘉人氏との出会いだった。著者はそこで、自分がつくりたかったのは、単に仲の良い会社ではなく、一人ひとりが本気で仕事に向き合い、同じ未来を目指す「熱狂する組織」だったことに気づく。
そこから医院の再生が始まった。スタッフとともに理念をつくり、採用基準を見直し、朝礼や社内イベントを通じて価値観を共有する。トップダウンを否定するのではなく、社長が責任を持って方向を示しながら、社員が自ら考え、動ける組織をつくっていく。目指したのは、会社という場所で大人がもう一度、本気で泣き、笑い、挑戦する「青春」だった。
そして、ゴリラ社長が思う存分バナナを追いかけるために欠かせない存在が、強力なナンバー2である。ナンバー2の仕事は、社長を自分の思い通りに動かすことではない。社長の特性や思考を理解し、次々に飛びつくバナナを拾いながら、会社が進むべき“大枠”を見失わないことだ。
こうして組織は再び動き始め、歯科医院からデイサービス、飲食事業へと広がり、売上は創業時の17倍超へと成長した。
本書が伝えるのは、完璧な社長になる方法でも、社員を思い通りに動かす方法でもない。社長はゴリラのままでいい。社員もナンバー2も、それぞれのままでいい。大切なのは、互いの違いを理解しながら同じ未来を見て、本気になれるチームをつくること。
「熱狂」と「青春」を武器に、人と組織を成長させる。そのために著者が失敗し、悩み、実践してきたすべてを詰め込んだ、ゴリラ社長流の実践的組織論である。