【目 次】
はじめに ── なりたい私に会いに行く 4P
1.ドーラの如く、母の如く 6P
2.『義父・山寺仁太郎』 19P
①思い出 ②直美君 ③手術の成功を祈って ④読書家 ⑤「甘利山」と「生涯現役」
⑥大村智博士との思い出 ⑦「提灯行列の幻影」 ⑧ご縁
3.ペンダントと茶葉がほどいたもの 43P
4.これは読書か 48P
5.袖すり合うも他生の縁 58P
6.ママさんリレーの思い出 66P
7.どこへも行かないという贅沢 70P
8.良きに計らえ 74P
9.欠伸してください 83P
10.雪の新橋で迷子になりました 90P
11.何か変 98P
12.恋の歌、うどんに化ける 106P
あとがきにかえて 110P
「はじめに── なりたい私に会いに行く」 本文より
四月のある日、私は六十六歳の誕生日を迎えた。
「前期高齢者」という肩書きをもらってからの一年は、びっくりするほど早く過ぎていった。まるで誰かが、私の時計の針をこっそり速めてしまったかのように。
二十七年前、父は七十一歳で旅立った。
虫歯ひとつない健康自慢の人だったのに、「さあこれから」というときに病に倒れてしまった。あまりに急な出来事に、一番驚いたのはきっと父自身だったと思う。父には、やりたいことがまだまだあったはずだ。
母と海外旅行に行くこと。
「寺子屋のような塾を開いて、近所の子どもたちの憩いの場を作りたい」という夢(父は教師だった)。
そして、孫たちとの夏休みキャンプの約束も。
時は流れ、私は六十六歳。
父が旅立った年齢まで、あと五年になった。
「もう五年しかない」と思うのか、「まだ五年もある」と考えるのか。
私は思った。
この五年で、「なりたい私」になろうと。
やってみたかったことを、先延ばしにせずやってみようと。
「いつか」ではなく、「いま」から。
なりたい自分に会いにゆく…。
その第一歩として、このエッセイを綴った。 山寺直美