愛知県西部(尾張国)は、天下人織田信長と豊臣秀吉の故郷である。彼らを輩出したこの地域が、どのような歴史を歩んできたのかは意外に知られていない。『信長公記』は信長研究の根本史料である。しかし著者太田牛一は信長生前以前の尾張については、極めて簡略にしか記していない。
『信長公記』の及ばない地域──それが「信長以前の尾張国」である。
主家斯波家の尾張拝領とともに移住してきた織田一族はどのように尾張に根を張り、勢力を拡大していったのか。尾張守護代家である織田伊勢守家と織田大和守家は、本当に尾張を分かち合う関係だったのか。
信長の織田弾正忠家は、曽祖父良信以前には遡れない家なのか。そして、信長の本拠地となる那古野には、なぜ今川氏の一族が居を構えていたのか。
信長の父信秀の手によって那古野城を失った今川一族は、いかなる運命をたどったのか。
そこには、信長が登場する以前の尾張を読み解く、もう一つの歴史があった。