「企業と社会」の経営学

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「企業と社会の良好な関係を如何に築くか」という問題は、経営学においては「企業の社会的責任(CSR)」論および企業倫理学として既に多くの研究成果が蓄積されている。しかし、その研究の多くは、企業が利潤追求と同時に自ら社会性を追求しなければならなくなっているという想定のもとに、その果たすべき社会的責任や行為倫理の実践的問題に関心を向けてきたように思われる。

それに対し、本書では、「利潤極大化を究極的目的とする企業が何故に、如何にして社会性をも追求するようになるのか」という基本的問題に主たる関心を向ける。これが本書の問題意識である。そこで、シュタインマン学派による対話倫理学としての企業倫理学、シェーラーらの政治的CSR論およびホーマンの経済学的性格の強い企業倫理学、さらには政治学における熟議民主主義論を批判的に吟味することを通してこの問題に接近することとした。

その結果、企業と社会の対立の解決は、企業と社会を対立軸として捉え、企業に対する社会の側からの拮抗力――例えばNPO/NGO――の存在に注目し、それらと企業との間の熟議を通してはじめて可能になるとするのではないかという結論に達した。しかし、その対話は資本主義と民主主義の両立の如何に関わる経済と政治の基本的な問題と関連しているが故に、それによっても社会のすべての構成員の完全な合意を獲得するという最適な解決に達することはついに不可能である。そうであれば、企業と社会の双方が不満を抱えながらも同意に達することで満足するという妥協による解決で満足せざるをえないであろう。かかる意味で、本書は企業と社会の関係についての経済学的かつ政治学的研究としての性格を有することとなった。
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