1990年、鳥取。平和塔で出会った少女は、世界が渇望した「伝説の宝石」だった。
舞台は1990年、鳥取。雁金山の中腹にある平和塔。そこは、地元の高校生・神田栄一郎たち5人組のささやかな溜まり場。ある日、栄一郎は塔の前で一人泣き崩れる少女、城内直子と出会います。この偶然の出会いが、彼らの運命を大きく変え、そして伝説の旋律を再び呼び覚ますことになります。 直子は、10歳にして世界的な国際コンクールで優勝した「伝説のピアニスト」。しかし、その輝かしい経歴の裏で、彼女は深い闇の中にいました。母は病により意識を失い、父は失踪してしまった。絶望の淵に立たされた彼女は、大好きだったピアノさえも「不幸を呼ぶもの」として拒絶し、自らの長い髪を切り落としてしまいます。 そんな彼女を救おうと動いたのは、五人の高校生たちでした。主人公の栄一郎、熱血漢の健太、現実的な里香、知性派の誠、そして慈愛に満ちた京子。彼らは直子の境遇を知り、彼女を施設へ送ろうとする非情な現実から守るために奔走します。自らの貯金を出し合い、自分たちの家に直子を迎え入れようとする彼らの行動は、打算のない純粋な友情そのものでした。 一方で、直子の才能を自らの名声のために利用しようとする音大教授・岡崎の影も忍び寄ります。直子の奏でる音は、聴く者のDNAに刻まれた遠い記憶を呼び覚ます「エピジェネティクス(後天的記憶情報)」の解放だと言われていた。まるで七本の指で弾いているかのような複雑な倍音と、アレンジの極致。彼女のピアノが再び響くとき、止まっていた時間が動き出す。
物語の中盤、ショッピングモールの広場に置かれたストリートピアノ。子供たちの無邪気な願いに応えて座った彼女の指が動き出すとき、真の奇跡が起こります。最初は静かなさざ波のように、やがてすべてを飲み込む大海原のように。
この物語は、一度壊れた人間が、他人の温もりによって再び「音」を取り戻していくまでの、あまりに美しい挽歌であり、賛歌です。ページをめくるたびに、あなたの心は直子のピアノに共鳴し、最後の一行を読み終えたとき、景色が違って見えるでしょう。愛すること、信じることの本当の意味を、この『モルフォの奇跡』で見つけてください。