【目次】
蘇る大川周明 坪内隆彦
第1章 神人合一
第2章 道義国家論
第3章 真個の中国精神を求めて
第4章 アジアの精神の統一
第5章 東洋哲学の可能性
第6章 中国共産党と儒教
第7章 天下による新国際秩序
新亜細亜小論 大川周明
欧米中心の国際秩序が動揺している。トルコのジャーナリスト、ハッサン・エレル(Hasan Erel)氏は「500年にわたる西洋覇権の終焉か?」と題した記事で、「西洋中心の世界ではなく、アフリカ・ユーラシアを中心とした新しい多極的な世界秩序」の到来を予想する。
欧米中心の国際秩序に異を唱える国では、思想家たちが新たな国際秩序の理論構築を急いでいる。かつて我が国は大東亜共栄圏を掲げて、欧米中心の国際秩序に異を唱えた。その理論構築を支えたのが大川周明である。
大川の言論には、欧米中心の国際秩序に対する根源的な批判と、その背景にある西洋哲学に対する透徹した分析が含まれていた。だからこそ、新たな国際秩序の理論構築を推進する世界の思想家たちは、いま大川の思想に注目しているのではないか。しかも、大川の思想には、新たな国際秩序が覇権主義に陥ることを回避するための大きなヒントが隠されている。
華東師範大学教授の許紀霖氏は、脱中心化と脱ヒエラルキー化を志向する「新天下主義」を掲げ、新たな国際秩序を模索している。彼は日本が提唱した大東亜共栄圏構想に「中国式の天下秩序の残滓」を見出している。日本人が唱えたアジア主義が、いま世界の思想家の間で蘇りつつあるのだ。
しかし敗戦後、GHQは大川が世界征服を目論んでいたと断罪し、民間人として唯一、A級戦犯の容疑で大川を起訴した。確かに、大川の言動には時代によってかなりの振幅があり、他民族の主体性への理解を欠いた「日本盟主論」に傾いた時期もあった。
だが、大川の思想の根底には、東洋の一元論に発する神人合一、万教帰一の観念があった。大川が道義国家を追求したのは、国家の在り方についても「大生命」の法則に基づいた道義の貫徹を求めたからなのではなかろうか。彼が、列強の植民地支配から脱するアジア諸民族に真個の精神の発揚を期待したのも、真個の精神こそ「大生命」と合致したものだと考えたからだろう。
大川には国家主義的な側面もあったが、同時に世界連邦を唱えるなど国家を超える世界人(コスモポリタン)的な側面もあった。大川は「真の世界人たるためには、先ず真の日本人たらねばならない」とも語っていた。
大川が日本中心主義から脱却し、世界連邦を唱えるにいたる契機は、支那事変の勃発だった。アジアの現実を直視し、王道アジア主義を唱えた石原莞爾との対話を経て、大川のアジア主義は新たな展開を見せていく。その劇的な展開を明確に示しているのが、本書に収録した『新亜細亜小論』である。既存の大川研究では、この大川の思想展開に焦点が当てられていなかったように思う。
『新亜細亜小論』には、欧米の覇道的秩序に代わるアジアの道義的統一の道筋が示されている。