東京とロンドンを活動の拠点に、ファッションやストリートの気配を捉えながらポートレイトを基調に写真作品を制作してきたフォトグラファーの坂田帆海による、初の写真作品集。同名展覧会のアーカイブに新作を加えて構成しています。
「他者とすべてを共有することは不可能だという前提があっても、通じ合ったと感知できる幸運な“完全なる一瞬”があるのではないか?」
著者は、カメラ(レンズ)を介し、自己と他者のコミュニケーションの価値と限界を抱いていたと言います。そして、一様であるはずもなく、不確実性にとらわれる相互理解への疑念が、彼女を旅へと誘いました。
本書は、二者のあいだに存在するも不可視の隔たりを見つめることによって、かえって、著者自身が対峙する主体や客体に向かって本能的に浮上する、対象への関心の強度を明らかにしています。制作過程における人と人、人と動物、人と物のあられもない関係性の探求は、質量のないコミュニケーションの多様なバランスを主題として見出し、作為の有無に関わらずイメージの可視化という法則にのみ従いながら一連の作品群となっていきました。
それらは、ここでいう“バランス”が、作家性を内包する意図と、幸運のうえにたつ成り行きの、どちらにも属していることを示しており、写真が、双方を自由に往来することができることを意味しています。そして、それぞれの作品は、不安定さの中にある“完全なる一瞬”を求めた彼女の身体と衝動が一致した、シンプルな資質のあらわれだと言い換えることができるでしょう。
書籍化にあたり、展示出品カットをカラー/モノトーンで作品化した作品や、追加カットを加えた30点(+表紙2点)で構成。高精細なJETPRESSを使用し、かつB4変形の大判サイズで製作することで、写真の魅力を損なうことなく味わうことができます。ケースには、書籍に収録された海辺の砂浜をイメージした素朴な風合いの板紙を使用し、手押しのスタンプでタイトルが印字されています。