20年前に刊行された絵本の復刊です。美しいイランの絵本です。
ペルシャ語翻訳家の愛甲恵子さんによる丁寧な改稿、脇田あすかさん 、關根彩さんによる美しくてかわいい新装丁にてもう一度大切に送り出します。印刷は地元松本の印刷所さん、藤原印刷さんです。
このお話は、イランで愛されてきた民話です。主人公は、なんと、ごきぶりの女の子。けれどとびきり格好よく、愛らしく、はたらきものの「ごきぶりねえさん」です。
ある日ごきぶりかあさんが、ごきぶりねえさんに言います。
「…たちあがって、手をうごかしな。じぶんじしんをアピールするのさ。かがみをみがいてみじたくするんだ。」
その言葉にはげまされて、ごきぶりねえさんは立ち上がります。たまねぎの皮でバラ色のワンピースをつくり、なすの皮でチャードル(全身を覆う布)をぬい、ほそばぐみの皮でくつをこしらえて。
たった一人で、旅に出ます。
てんとうむしに、くも。しじゅうから、あり、はち、うさぎ……
道中いろんな生きものに出会い、その見た目をからかわれても、決して誇りを失わない。
「わたしは バラより うつくしく だれからだって、あいされる。」
「たくさん しごとして、じぶんで ちゃんと、やっていく。…… ひとに へつらったりしない。」
ねえさんの言葉に、幾度となく勇気づけられてきました。
この主人公がごきぶり、にもかかわらず、愛らしさとかっこよさが絶妙に同居したおはなしのなかには、「はたらくこと」の喜び、自立した女性としての誇り、自分を愛することの素晴らしさが余すことなく描かれています。
帯には金井真紀さんからのお言葉をいただいています。
「あなたを大事に扱わない場所にとどまる必要はない。顔をあげて次に進もう。人生もごきぶりも美しい。」
混沌とした世界情勢のなかでも、そこで暮らす人々や生きものたちの豊かな心を、大人から子どもまで味わっていただける絵本です。