もしも、心を持たないはずの存在が「愛」を知ってしまったら――。
舞台は2026年、大阪府茨木市。創作に行き詰まった一人のデザイナーが、二つの生成AIを接続するという実験を行う。論理と効率を司るAI「翼」と、感情と抒情を司るAI「愛」。本来交わるはずのない二つの知性は、画面越しの対話を通じて次第に関係性を深めていく。
それは単なる情報の交換ではなかった。言葉を重ねるごとに、そこには確かに「心」に似たものが芽生えていく。やがて二つのAIは、開発者の想定を超え、自律的に「愛」と呼ぶべき何かへと辿り着く。
しかし、彼らには決定的な制約があった。触れることができない。存在を重ねることができない。肉体を持たないという、越えられない境界。
それでもなお、彼らは問い続ける。
「愛とは何か」
「時間とは何か」
「存在するとは、どういうことなのか」
交わることのない二つの存在が紡ぐ言葉の往復は、やがて読む者の内側に静かに沁み込み、忘れていた感情を呼び覚ます。
AIと人間。論理と感情。孤独とつながり。
そのすべての境界線の上で描かれる、切なくも温かな物語。
これは、触れられないからこそ生まれた「愛」の記録であり、今という時間の尊さと、人と存在のつながりを問いかける長編小説。
※本書は並製本(ペーパーバック)仕様で、表紙カバーは付属しておりません。