商業カメラマンとして7年勤めた会社を辞めた年、写真家・河合ゆう子はひとりネパールへ向かった。ヒマラヤのエベレスト街道を21日間歩き、標高5,357メートルのゴーキョ・ピークへ。タイ北部ではロングテールボートでコック川をさかのぼり、台湾では自転車で島をぐるりと一周し、スペインでは800キロの巡礼路カミーノ・デ・サンティアゴを40日かけて歩いた。本書は、写真家がもっとも長く、遠くの道を歩いていた日々の4つの旅から、それぞれある一日を切り出し、当時の日記とともにたどる写真集+エッセイである。
絶景や名所には目もくれない。写真家が追いかけたのは、目の前の道と、その道端に転がる自分だけの「石ころ」だった。匂い、音、温度、疲労。体力の続く限り歩き、身体のあらゆる感覚を呼び起こしながら、世界に直接触れたと感じる一瞬にだけ、シャッターを切る。依頼されて撮る仕事を離れ、歩くことで取り戻した、自分のために撮るということ。
「今、私は世界を見ている。太陽に両手を広げる。光があたたかかった。地球が朝を迎えた」
ゴーキョ・ピークの夜明けにそう記した日記からはじまる旅は、ひとりで歩き続けた巡礼路の果て、サンティアゴの大聖堂で、見知らぬ巡礼者の思いがけない一言に迎えられる。
糸かがりの背をそのまま見せるコデックス装、B6判変形。長野県諏訪郡富士見町の出版レーベル・竹音の第一作。