第1章 知っているようで知らないミルクのこと
牛乳でもヤギ乳でもないミルクがある
おやつはヤギのミルクだった
ミルク業界、実はけっこう奥が深い
母乳のデータ、コップ一杯すらない
基本の材料は5つ、勝負は組み合わせ
形はバラバラ、ミルクは似たりよったり
母乳という、動物それぞれの設計図
お湯だけで完結するミルク
誰でも作れる、なのに作れない
本当は、使わずに済むのが一番いい
第2章 「パンダのミルクを作ってください」
ヤギ乳に支えられた戦中の子ども時代
騒然とした時代に、なぜか乳業メーカーへ
工場は教科書通りにいかない
国賓級の来客、カンカンとランラン
動物好きではなかった私が、パンダに関わる
早すぎた別れ、そして託された命
パンダの妊娠はなぜ読みにくいのか
双子という幸運、そして見捨てられる1頭
動物から最も遠い場所で
「いいですよ、やってみましょう
「難しいだろう」といわれていた、それでも私は
クマを手本に、データなき挑戦
完成したミルクに、出番はなかった
100グラムから100キロへ、300倍の成長劇
初乳と常乳、知っておきたい母乳の二段構え
ついに出番、パンダの聖地・和歌山へ
世界が認めた繁殖実績、そして幕引き
すり替え方式、母パンダをあざむく手品
渡部先生という研究者、搾乳機が開いた道
足かけ4年で集まった、コップ半分の母乳
「下痢が減った」、その一言と特許を取らない決断
なぜ350グラムなのか、小さな缶の理屈
アレルギーミルクという難物
言葉の壁を越えて火鍋を囲む
「調査依頼」という肩書きで、もう一度パンダ会議へ
33年の伏線回収、双子と入れ替え方式
まさかレッサーパンダにも?収斂進化の妙
パンダの初乳は、なぜ「緑色」なのか
1日1行、地味な習慣が支えてくれた
<コラム>神戸市立王子動物園を訪ねて ~タンタンを支えたパンダミルク~
心臓疾患という転機 /赤ちゃん用ミルクが、晩年を支えた/ミルクは、知らないところで生きている /中国との協力、積み重ねられた研究 /作り手の知らないところで
第3章 1日20リットル!ゾウへ陸上最大の愛を
陸上最大の動物、ゾウとは
ネズミもゾウも、同じだけ心臓を打つ
乳頭の位置と、並外れた体重比
何度も繁殖するが、育たない
カルシウムと免疫グロブリン、2つの気がかり
「単一調乳」の原則
ズゼと、市原ぞうの国への旅
母乳を分析してみると
ミルク粥、東南アジアに伝わる知恵
1トンと200キログラム、規模の差に負けない価格
なぜ2.5キログラムの小分けにしたのか
見過ごせない壁、賞味期限
1日20リットル、並外れた大食漢
骨格と関節を支えるグルコサミン
中鎖脂肪酸という、もう一つの手がかり
人間とゾウに共通するオリゴ糖
なぜここまで力を尽くすのか
拒まれても、生まれてきた142キログラムの命
乳母プーリーの決断
グルコサミンの発見を論文に
姉妹に見守られて
房総の女傑と、6000万円の恩
一時的な橋渡し、それが人工哺育
<コラム>日本初繁殖! マルミミゾウ「アオ」誕生の記録
日本初、世界でも稀な出産/エコーに映った、小さな「鼻」 /神頼みと、ミルクという備え /地味だが大切な発見、それは溶けやすさ/前例のない出産、そして誕生 /あと少し、乳首に届くまでの工夫/栄養から「気そらし」へ、変わったミルクの役割/広がるミルクの世界、そして残された袋/積み重ねられてきた仕事
第4章 海の哺乳類、濃厚ミルクの世界
よく知られたゴマフアザラシ
18種いるアザラシの一つ
一つの「海獣ミルク」としてまとめる
冷たい海で生きる子を育む母乳
不飽和脂肪酸という知恵
海獣の母乳は「高度な」不飽和脂肪酸が豊富
イヌ用ミルクが海獣に近い理由
各地に伝わる人工哺育の記録
2017年2月7日、小樽からの電話
大洗水族館とイルカの母乳
海獣ミルクM5、全国へ
最大公約数のミルク、現場のアレンジ
<コラム>アザラシとアシカを育てたM5の記録
初めての出産、福和の物語 /アシカの日向、はじめは小さく弱い体で /海音とエマ、それぞれの哺育 /人工哺育の先にある願い
第5章 猛獣もミルクで育つ。だからヒグマミルクが必要だ
北海道に生きる、最大の陸の獣
着床遅延という、もう一つの仕組み
ヒグマとツキノワグマ
北海道とヒグマの、厳しい歴史
工夫の積み重ねと、名前の分からない前任者
同じクマでも、ミルクは違う
パンダミルクへつながる仕事
<コラム>のぼりべつクマ牧場とミルクを飲む子グマ
人工哺育が救った命、そしてボスへの道
終章 我ら哺乳類。キリンもカンガルーもみんなミルクで育つ
備えがあれば現場は安心して見守れる
ドッグミルクもネコミルクも、動物園・水族館へ
市販のキャットミルクがピューマを救った~盛岡市動物公園ZOOMO~
開発者直伝 動物別ミルク活用ノート
【著者】高津善太
森乳サンワールド株式会社顧問。1968年東京大学理学部生物化学科卒業、森永乳業株式会社入社。研究所・乳製品工場勤務を経て、森永エンジニアリング株式会社にて設備設計・建設に関わる。その後バイオ医薬品研究開発、人間の赤ちゃん用ミルク等研究開発に従事。1987年、東京大学医学部付属病院への出向中、隣の研究室の獣医師から相談を受け、世界初のパンダ専用ミルク「PANDA MILK」の開発に着手。2010年には日本大学、中国・成都大熊猫繁育研究基地との国際共同研究により「PANDA MILK-10」を完成させる。35年以上にわたり希少動物の人工哺育に貢献し、その成果は国際学術論文としても発表されている。
【執筆協力】木村悦子
出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして独立。編集プロダクション「ミトシロ書房」主宰。上智大学卒業後、出版社勤務後を経てフリーランスの編集者・ライターに。書籍の企画・編集の傍らで、『どうぶつ好きのお仕事図鑑』(日東書院)、『コビトカバまるごとBOOK』(辰巳出版)、『ラッコBOOK』『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』(グラフィック社)など動物を深く追究した取材・著作を行う。