本書は、画家・日高理恵子が自然光のもとで作品を展示した2つの展覧会を鈴木理策が撮り下ろした写真と、椹木野衣が書いた2つの文章で構成されています。
2023年に多摩美術大学 アートテークギャラリーで開催された「家村ゼミ展 2023 空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」では、ひとつの空間に、ほぼ1作品を自然光の中で展示するという試みがされました。ここでの体験をもとに、2025年に同ギャラリーで「退任展 日高理恵子 空間と、自然光と、絵と、」が開催されました。そこでは、日高の「見ること」「絵画に対する考え」「空間に対する感覚」を、空間と光を通して探っています。本書では、この2つの展覧会を、自身の作品で常に「見ること」について問いかけてきた写真家・鈴木理策が撮り下ろした写真で構成しています。鈴木の「見ること」によって、日高の「見ること」、絵画と空間、光との関係がいっそう立ち現れ、視点の動きによって、1枚の絵画の中でも異なる表情、見方を浮かび上がらせます。「空」を描くために「木の空間」を描くという日高独自の見上げた視点の絵画は、鑑賞者に木や空を「見る」ことの新たな体験を促します。椹木はその体験を自身の身体、知覚とともに、単に文章を寄せるにとどまらない、実験的な2稿で日高の絵画に、展示に、対峙しました。
またデザイナーの須山悠里が、2つの展覧会を自身が見、体験し、感じたことを、いわゆる展覧会の記録という枠組みを超えてまとめあげています。「本」というこの場で、絵画と、写真と、文のそれぞれ自立し、かつ関係しあう、他に類を見ない一冊が生まれました。