祝!栗山英樹さん
2026年 野球殿堂入り
2026年1月15日、競技者表彰エキスパート表彰から栗山英樹さんが殿堂入りとなりました。おめでとうございます!
野球殿堂とは
野球殿堂は、日本の野球の発展に大きく貢献した方々の功績を永久に讃え、顕彰するために1959年に創設されました。野球発祥の地である米国では、1939年に野球殿堂が創設され、日本の殿堂の20年先輩になります。「殿堂」とは英語では、"Hall of Fame"といわれ、直訳すると「名誉の殿堂」という意味になります。殿堂入りされた方々の表彰レリーフ(ブロンズ製胸像額)を、野球殿堂博物館内の殿堂ホールに掲額し、永久にその名誉を讃えます。野球殿堂入りには競技者表彰と特別表彰があります。
(公益財団法人 野球殿堂博物館 公式ホームページより引用)


今回のキーワード
時代がどれだけ変わろうと、志さえあれば前に進める
栗山店長コメント
栗山店長コメント
「盡己(じんこ)」。おのれを尽くす、という意味です。
先日、岡山県高梁市に行ってきました。かつての備中松山藩です。
幕末、借金十万両で沈みかけたこの小さな藩を、わずか七年で立て直し、さらに十万両の蓄えまで作った学者がいました。山田方谷(やまだほうこく)。「財政再建の神様」とも呼ばれる人です。
その方谷が若き日に師事したのが、当時日本中の学ぶ者が仰ぎ見た大先生、佐藤一斎。一斎先生が方谷に手渡したと伝わる書が、高梁に残っています。それが「盡己」。どうしても、本物が見たかったのです。
書の前で、絶句しました。上手いとか美しいとか、そういうことではないのです。方谷がこれから背負う苦労を、時代のうねりそのものを、墨に叩きつけたような迫力。
実は私も、WBCの時、この言葉を胸に闘っていました。とにかく誠を尽くそう、できることをやり尽くそう、と。その思いを、この本が改めて示してくれたのです。
やがて藩は朝廷の敵とされ、郷里を明け渡す時が来ます。その夜、方谷は唐の詩人・杜甫の詩を口にします。国破れて山河在り、城春にして草木深し。国が滅んでも山河は変わらず、春は必ず巡ってくる——。その言葉を聞いた者の胸に、こんな思いが灯るのです。
「方谷はきっと伝えるだろう。国のため、誰かのために生きることの尊さを。生生流転を繰り返す世のはかなさを、小さくも輝かしき人の誠のかけがえのなさを」
ひたむきに生きるその人たちの大半は、名もなき、市井(しせい)に生きる普通の人々です。その人たちのために、自分は何をすべきか。時代がどれだけ変わろうと、志さえあれば前に進める。
生きることの難しい時代だからこそ、この思いを切に感じるのは、私だけでしょうか。

難しく考えず、面白い物語を読む感覚で。
栗山店長コメント
論語です。また論語か、と言われてしまいそうですが、まあ聞いてください。
著者は下村湖人さん。『次郎物語』で知られる作家であり、教育者です。以前ご紹介した『青年の思索のために』も下村さんの著書でした。そう、私の学びには欠かせない、大切な人物の一人です。
論語は誰もが知っています。でも、その良さを本当に自分のものにするのは、簡単ではありません。私も、何もかもが手探りだった時期にこの本と出会いました。
読み始めて、驚きました。たぶんそれまでは、学ぼう学ぼうとする心が邪魔をしていた。この本を読んでいると、単純に「面白いな!」となったのです。
以前、平澤興先生の『論語を楽しむ』をご紹介した時、論語は読み手の解釈でまったく違うものになる、と書きました。本当です。下村さんの手にかかると、論語は孔子先生と弟子たちの、生きた物語になるのです。
たとえば、私もよく使わせてもらう言葉に「一以て之を貫く」があります。意味を汲めば、「私はたったひとつのことを貫いてきたに過ぎない。それは忠恕——誠実さと思いやりだ」。本書には、この言葉が生まれる場面が、物語として描かれています。
先生が最近、何も教えてくださらない。若い弟子たちがそんな不満を言い合い、思い切って本人にぶつける。返ってきた答えが、この一言でした。しかも先生は、言うだけ言って部屋を出て行ってしまうのです。残された弟子たちの中で、誰がその真意を解いてみせたのか——そこから先は、ぜひ本で。
ただ、一つだけ。この「一」は、頭で覚えた理屈ではありません。先生が体験に体験を重ねて、ようやくたどり着いたもの。だからこそ、二千五百年も残ってきたのです。ここに、私はグサッときました。
難しく考えず、面白い物語を読む感覚で。楽しいです。そして必ず、あなたの思考を助けてくれます。

先人たちが口を揃えて言うのは、結局、人柄であり、人間性です。
栗山店長コメント
栗山店長コメント
栄二と、さぶ。江戸の表具店で働く、二人の若者の物語です。
栄二は才能にあふれ、仕事もできる。さぶは、どちらかと言えば不器用でも、コツコツと努力を重ねる、人間として信用できる男です。この才能と人柄のぶつかり合いに、皆さんきっと、人生そのものを感じるはずです。
特に、さぶの、絶対に人を疑わない、人を信じる力。「いやー、自分はどうだろうか」と考え込んでしまいました。
物語は、栄二がいわれのない罪を着せられるところから大きく動きます。罪人として送られた先は、人足寄場——今でいう更生施設のような場所です。栄二は自暴自棄になり、人が信じられなくなる。当然です。
それでも寄場でのさまざまな出会いの中で、栄二の心は少しずつ浄化されていきます。支え続けたのは、さぶの思いでした。そして最後には、大どんでん返しが待っています。その折、栄二がこんな言葉を口にします。
「——おれは島へ送られてよかったと思ってる、寄場であしかけ三年、おれはいろいろなことを教えられた、ふつうの世間ではぶっつかることのない、人間どうしのつながりあいや、気持のうらはらや、生きてゆくことの辛さや苦しさ、そういうことを現に、身にしみて教えられたんだ、読本でも話でもない、なま身のこの躯で、じかにそういうことを教えられたんだ」
先人たちが口を揃えて言うのは、結局、人柄であり、人間性です。分かっている、と誰もが思う。でも、それを実行し続けることが、どれほど難しいか。
この物語が書かれたのは1963年、高度経済成長の真っ盛り。今とはまるで違う時代に書かれて、それでも、ずっと読み継がれてきた。時代がどれだけ変わっても、大切なものは変わらない。それだけのことなのだと思います。
この秋の夜長、ぜひ読んでみてください!

栗山英樹氏と有志による
北海道栗山町の手作り天然芝球場
栗の樹ファーム
栗山店長からのご挨拶
自分の人生で経験できることは限られていますが、私たちは「本」を通じて先人の素晴らしい経験や考え方を学ぶことができます。
また、人としての大切な情緒を熟成するには、動画だけでなく文字から取り入れ、自分の頭で考える時間がどうしても必要だと私は思うのです。
そこで今回、こんな場所を作ってもらいました。
大変な時代だからこそ、自分の助けになる一冊と出会うきっかけになったら嬉しいです。
栗山英樹書店について
北海道日本ハムファイターズ、野球日本代表「侍ジャパン」を監督として率いた栗山英樹さん。この連載では毎回、その真摯で“実践的”な人生論に根差した書籍たちをご紹介いただきます。
2026-09-30
栗山店長からのご挨拶
自分の人生で経験できることは限られていますが、私たちは「本」を通じて先人の素晴らしい経験や考え方を学ぶことができます。
また、人としての大切な情緒を熟成するには、動画だけでなく文字から取り入れ、自分の頭で考える時間がどうしても必要だと私は思うのです。
そこで今回、こんな場所を作ってもらいました。
大変な時代だからこそ、自分の助けになる一冊と出会うきっかけになったら嬉しいです。

栗山 英樹
(くりやま ひでき)
1961年東京都生まれ。監督として2016年に北海道日本ハムファイターズを日本一に、2023年には侍ジャパンをWBC世界一に導く。2024年、日本ハム球団の最高責任者であるCBOに就任。『信じ切る力』(講談社)、『監督の財産』(ワニブックス)、『栗山英樹の思考』(ぴあ)など著書多数。2026年1月に『栗山英樹がトップ経営者から引き出した逆境を突破するための金言』(HNK出版)を発売。

著書一覧はこちら
前半 / ジュンク堂書店現役書店員 大賞受賞
後半 / 犬怪寅日子さんインタビュー

